投資信託の選び方マニュアル | 信託報酬からリスク評価まで徹底解説

「投資に興味はあるけれど、どの商品を選べばいいのかわからない…」
「数千本もある投資信託の中から、本当に良いものを見分けるための基準が知りたい…」
こんな悩みを抱えていませんか?
日本で販売されている投資信託は約5,000本以上。その中から自分に合った商品を選ぶのは、投資初心者にとって非常に難しい課題です。
本記事では、投資信託の基本から選び方の具体的な比較基準、おすすめの低コスト商品、そして長期運用のコツまで、初心者の方でも理解できるよう徹底解説します。
この記事を読めば、あなたも「投資信託 比較 基準」を身につけ、数千本ある商品の中から本当に良い投資信託を見極められるようになるでしょう。
投資信託の基本を理解しよう
まずは投資信託の基本的な仕組みを理解することから始めましょう。正しい知識を身につけることが、賢い選択の第一歩です。
投資信託とは?初心者が知るべき仕組み
投資信託とは、多くの投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券などに分散投資する金融商品です。
わかりやすく例えると、投資信託は「おまかせ買い物代行サービス」のようなものです。あなたはお金を預け、プロが市場で最適な買い物(投資)をしてくれます。そして、その成果(リターン)があなたに還元されます。
投資信託の最大のメリットは、少額から始められること、そして専門知識がなくても分散投資ができることです。1万円程度から始められる商品も多く、忙しい会社員や投資初心者の方でも始めやすいのが特徴です。
投資信託の主な種類と特徴
投資対象による分類
種類 | 特徴 | リスク度 | 初心者向け度 |
---|---|---|---|
株式投資信託 | 主に株式に投資するファンド。値上がり益と配当による収益を目指す | 高い | ★★☆ |
債券投資信託 | 主に債券(国債・社債など)に投資するファンド。安定した利息収入を目指す | 中程度 | ★★★ |
バランス型投資信託 | 株式と債券に分散投資するファンド。リスクを抑えながら安定したリターンを目指す | 中程度 | ★★★★ |
REIT投資信託 | 不動産投資信託(リート)に投資するファンド。不動産からの家賃収入等を間接的に得られる | 中〜高 | ★★☆ |
運用手法による分類
種類 | 特徴 | コスト | 初心者向け度 |
---|---|---|---|
インデックス型投資信託 | 日経平均やTOPIXなどの指数(インデックス)に連動する運用を目指すファンド | 低い | ★★★★★ |
アクティブ型投資信託 | 運用者の判断で銘柄を選び、指数を上回る運用成績を目指すファンド | 高い | ★★☆ |
初心者の方には、リスクが分散されているバランス型や、コストが低いインデックス型から始めることをおすすめします。
投資信託に関わる各社の役割と手数料の流れ
投資信託には複数の会社が関わっており、それぞれに手数料が支払われています。基本的な仕組みを理解しておきましょう。
投資信託に関わる主な関係者
関係会社 | 主な役割 | 代表的な会社 |
---|---|---|
運用会社 (投資信託委託会社) |
ファンドの設計や運用方針の決定、実際の運用を行う | 野村アセットマネジメント 三菱UFJ国際投信 日興アセットマネジメント |
販売会社 | 投資家への販売窓口となる証券会社や銀行 | SBI証券、楽天証券 三菱UFJ銀行 地方銀行など |
信託銀行 | ファンドの資産を実際に管理・保管する銀行 | 三菱UFJ信託銀行 三井住友信託銀行 |
投資信託にかかる主な手数料
ファンドの運用管理費用で、毎日少しずつ差し引かれます。年率0.1%~2.0%程度で、運用会社、販売会社、信託銀行に分配されます。長期投資では最も影響が大きい費用です。
(申込手数料)
購入時に一度だけかかる費用です。0%(ノーロード)~3.3%程度で、販売会社に支払われます。
解約時にファンドに残される費用です。0%~0.5%程度です。
長期投資では特に信託報酬の影響が大きいため、この点は商品選びの重要な比較基準となります。
投資信託を比較する5つの基準
数千本ある投資信託から良い商品を選ぶには、明確な比較基準が必要です。ここでは、投資の専門家が実際に使っている5つの基準をご紹介します。
投資信託の比較基準①:信託報酬などのコスト
投資信託選びで最も重要な比較基準の一つが「コスト」です。特に長期投資では、小さな手数料の差が将来のリターンに大きく影響します。
コストの長期的影響
例えば、信託報酬が年1.5%と年0.2%の商品では、30年間で約33%もの差が生まれます。
1,000万円の投資
信託報酬0.2%
約1,910万円
信託報酬1.5%
約1,580万円
差額:約330万円
チェックすべき主なコスト項目
コスト項目 | 特徴 | 投資額1000万円の場合の年間コスト例 |
---|---|---|
信託報酬 | 毎日差し引かれる運用管理費用(年率) | インデックス型: 5,000円〜15,000円 アクティブ型: 15,000円〜30,000円 |
販売手数料 | 購入時に一度だけかかる費用(ノーロードなら0%) | ノーロード: 0円 フロントロード: 10,000円〜30,000円 |
信託財産留保額 | 解約時にファンドに残される費用 | 0円〜10,000円 |
その他費用 | 売買委託手数料、監査費用など | 1,000円〜5,000円 |
一般的に、インデックス型の投資信託は信託報酬が年0.1%~0.5%程度と低く、アクティブ型は年0.8%~2.0%程度と高めです。
長期の資産形成を目的とする場合は、できるだけ低コストの商品を選ぶことが重要な比較基準となります。特に、同じインデックスに連動する商品なら、コストが低い方が有利です。
投資信託の比較基準②:過去のパフォーマンスと運用実績
過去の運用実績も重要な比較基準の一つです。ただし、「過去の実績は将来の成果を保証するものではない」ことを常に念頭に置いておく必要があります。
チェックポイントは以下の通りです:
- ベンチマーク(指数)との比較:インデックスファンドなら指数にきちんと連動できているか、アクティブファンドなら指数を安定して上回っているか
- 運用期間:最低でも5年以上、できれば10年以上の運用実績があるか
- リターンの安定性:年ごとのリターンのばらつきはどうか
- 下落局面での耐性:市場が下落した時にどの程度の下落で済んでいるか
アクティブファンドの場合、短期的に好成績でも長期的に指数を上回り続けることは困難です。実際、日本のアクティブファンドの約7割は長期的に指数に負けているというデータもあります。
一方、インデックスファンドの場合は「トラッキングエラー」(指数との乖離)が小さいか、つまり指数にしっかり連動できているかが重要な比較基準となります。
投資信託の比較基準③:投資対象と資産分散度
投資信託の投資対象と資産分散度も重要な比較基準です。自分の投資目的やリスク許容度に合った投資対象を選ぶことが大切です。
チェックポイントは以下の通りです:
- 投資対象国・地域:日本だけか、先進国中心か、新興国も含むグローバル分散か
- 投資対象資産:株式中心か、債券中心か、複数資産に分散しているか
- 業種・銘柄分散:特定の業種や銘柄に集中していないか
- 投資スタイル:大型株中心か、中小型株も含むか、バリュー・グロース・配当などの特定スタイルか
初心者の方には、まず「全世界株式」や「バランス型(株式と債券の複合)」など、幅広く分散された投資信託から始めることをおすすめします。特定の国や業種に集中した商品は、値動きが大きくなるリスクがあります。
自分のリスク許容度に合わせて、株式と債券の比率を調整するのも一つの方法です。リスクを抑えたい場合は債券の比率を高く、リターンを追求したい場合は株式の比率を高くするといった調整ができます。
投資信託の比較基準④:運用会社の信頼性と規模
投資信託を提供する運用会社の信頼性や規模も、商品選びの重要な比較基準です。
チェックポイントは以下の通りです:
- 運用会社の規模:運用資産残高、従業員数、歴史など
- 企業グループの信頼性:バックにある金融グループは安定しているか
- 運用哲学・方針:長期投資家の利益を重視しているか
- 情報開示の透明性:運用状況やコストなどの情報をわかりやすく開示しているか
日本の主要な運用会社としては、野村アセットマネジメント、三菱UFJ国際投信、日興アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントなどが挙げられます。
近年は、SBI・バンガード・インデックス・ファンドのような外資系運用会社とのコラボレーションも増えています。バンガードやブラックロックなど、海外の大手低コスト運用会社の商品も選択肢に入れると良いでしょう。
投資信託の比較基準⑤:純資産総額とリスク指標
最後の比較基準として、ファンドの規模(純資産総額)とリスク指標があります。
純資産総額とは、そのファンドの資産規模のことです。一般的に、純資産総額が大きい(数百億円以上)ファンドには以下のメリットがあります:
- 運用効率が良い(分散投資がしやすい)
- 信託報酬が引き下げられる可能性がある
- 償還(ファンドの終了)リスクが低い
一方、純資産総額が小さい(数十億円未満)ファンドには以下のデメリットがあります:
- 運用効率が悪い
- 償還リスクが高い(実際に小規模ファンドの統合や償還は頻繁に起きています)
また、リスク指標も重要な比較基準です。主なリスク指標には以下のものがあります:
- 標準偏差:リターンのばらつき度合いを示す指標。値が大きいほどリスクが高い
- シャープレシオ:リスクに対するリターンの効率性を示す指標。値が大きいほど効率が良い
- 最大下落率:過去の最大の下落幅を示す指標。値が小さいほうがリスクが低い
これらのリスク指標は目論見書や運用報告書で確認できますが、モーニングスターなどの外部評価サイトで比較するのも効果的です。
投資信託のタイプ別選び方
投資信託には大きく分けて「アクティブファンド」と「インデックスファンド」があります。それぞれの特徴と選び方を解説します。
投資信託の選択:アクティブファンドとインデックスファンドの違い
アクティブファンドとインデックスファンドの違いを理解することは、投資信託選びの基本です。
アクティブファンド
ファンドマネージャーが自らの判断で銘柄を選び、市場平均(指数)を上回るリターンを目指すファンド。
メリット
- 相場環境によっては指数を大きく上回るリターンが期待できる
- 特定の市場環境や投資テーマに特化した運用が可能
- 運用者の専門知識や分析力が活かされる
デメリット
- 信託報酬が高い(年0.8%~2.0%程度)
- 長期的に指数を上回るのは難しい
- 運用者の交代などで運用成績が変わる可能性
インデックスファンド
日経平均やTOPIXなどの指数(インデックス)に連動することを目指すファンド。
メリット
- 信託報酬が低い(年0.1%~0.5%程度)
- 運用の透明性が高い
- 長期的には多くのアクティブファンドを上回る傾向
デメリット
- 指数を上回るリターンは期待できない
- 下落相場でも指数と同じように下落する
- 指数の構成銘柄に機械的に投資するため柔軟性に欠ける
アクティブファンドとインデックスファンドの比較
比較項目 | アクティブファンド | インデックスファンド |
---|---|---|
運用方針 | 市場平均を上回るリターンを目指す | 市場平均と同等のリターンを目指す |
信託報酬(年率) | 0.8%〜2.0%程度 | 0.1%〜0.5%程度 |
銘柄選定 | 運用者の判断で選定 | 指数に連動 |
リターン特性 | 運用者の腕次第で大きく変動 | 指数と同等のリターン |
長期投資適性 | 運用者の交代などで変化あり | 安定的に指数に連動 |
専門家の見解:長期投資の観点からは、コスト面でのメリットが大きいインデックスファンドが優位とされています。実際、投資の大家ウォーレン・バフェット氏も一般投資家には低コストのインデックスファンドを推奨しています。
ただし、新興国株式など情報の非効率性が残る市場では、優秀なアクティブファンドが指数を上回るケースもあります。投資対象に応じて使い分けるという方法もあります。
投資信託の目的別選び方(長期資産形成・教育資金・老後資金)
投資目的によって、選ぶべき投資信託も変わってきます。主な目的別の選び方を見ていきましょう。
長期資産形成(20年以上)の場合
- 株式の比率を高めに(60%~100%程度)
- 全世界株式インデックスファンドがおすすめ
- 信託報酬の低さを重視
- 積立投資(ドルコスト平均法)で購入
教育資金(5~15年程度)の場合
- 時期が近づくにつれて株式比率を下げる
- 株式と債券のバランスファンドがおすすめ
- 中期的な安定性を重視
- 目標額に達したら徐々に安全資産にシフト
老後資金(退職後の収入源)の場合
- インカム(分配金・利息)重視の運用
- 債券、REIT、高配当株式などを組み合わせる
- 元本の安全性とインフレ対応力のバランス
- 定期的な見直しと調整
また、年代別のおすすめ投資信託も異なります。若いうちは値動きが大きくてもリターンが期待できる全世界株式中心、年齢が上がるにつれて債券の比率を高めていくというのが基本的な考え方です。
投資信託の年代別おすすめ運用戦略
年代によって投資期間やリスク許容度が異なるため、おすすめの運用戦略も変わってきます。
20~30代(資産形成の初期段階)
- 全世界株式インデックスファンドを中心に
- 株式比率は高め(80%~100%)
- 毎月の積立投資を習慣化
- NISA・iDeCoをフル活用
40代(資産形成の拡大期)
- 全世界株式を中心に、債券も徐々に組み入れ
- 株式:債券=70:30程度
- 収入増に合わせて積立額を増額
- 資産の定期的な見直しとリバランス
50代(資産形成の成熟期)
- 株式:債券の比率を徐々に調整
- 株式:債券=60:40~50:50程度
- リスク資産の比率を徐々に引き下げ
- 老後の具体的な資金計画を立てる
60代以降(資産の取り崩し期)
- インカム重視の運用へシフト
- 株式:債券=40:60~30:70程度
- 定期的な収入源としての活用
- 相場下落時に備えた緊急資金の確保
年代に関わらず、自分のリスク許容度や投資目的に合わせた資産配分が最も重要です。全ての年代で共通するのは、信託報酬などのコストを抑えることの重要性です。
投資信託の目論見書を読み解くポイント
投資信託を選ぶ際には、目論見書(もくろみしょ)をしっかり読むことが大切です。しかし、専門用語が多く初心者には難しいと感じるかもしれません。ここでは、目論見書の重要ポイントを解説します。
投資信託の目論見書で確認すべき10の重要項目
目論見書は投資信託の「取扱説明書」のようなものです。特に以下の10項目を確認しましょう。
- ファンドの基本情報:正式名称、運用会社、信託期間など
- ファンドの目的・特色:投資対象、運用方針、ベンチマークなど
- 投資リスク:価格変動リスク、為替リスク、信用リスクなど
- 運用実績:過去のリターン、基準価額の推移など
- 手続き・手数料等:購入・換金方法、各種手数料、税金など
- 信託報酬の内訳:運用会社、販売会社、信託銀行の配分
- 分配方針:分配金の決定方法、頻度など
- 運用体制:運用チーム、意思決定プロセスなど
- 運用制限:組入比率の制限、デリバティブの使用制限など
- その他の費用・手数料:監査費用、売買委託手数料など
特に重要なのは、「投資リスク」と「手続き・手数料等」の項目です。投資信託は元本保証ではないため、どのようなリスクがあるのかをしっかり理解しておく必要があります。
また、手数料は長期的なリターンに大きく影響するため、細かく確認することが重要です。特に信託報酬(運用管理費用)は毎日差し引かれるため、長期投資では大きなコスト要因となります。
投資信託のリスク・リターン特性の見極め方
目論見書の「投資リスク」のセクションには、そのファンドの主なリスクが記載されています。主なリスク・リターン特性としては以下のようなものがあります。
- 価格変動リスク:株式や債券の価格変動による基準価額の変動リスク
- 為替変動リスク:外貨建て資産の場合の為替変動による基準価額の変動リスク
- 信用リスク:発行体の財務状況悪化などによる債券価格の下落リスク
- 流動性リスク:市場規模や取引量が少ない場合の売買による不利な条件での取引リスク
- カントリーリスク:投資対象国の政治・経済・社会情勢などによるリスク
これらのリスクを総合的に示す指標として、「標準偏差」や「シャープレシオ」などがあります。標準偏差は値動きの大きさ(ブレ幅)を示し、値が大きいほどリスクが高いと言えます。シャープレシオはリスク1単位あたりのリターンを示し、値が大きいほど効率的な運用と言えます。
また、「最大下落率」も重要な指標です。過去にどの程度の下落があったかを知ることで、自分が心理的に耐えられるかどうかの判断材料になります。
これらの指標は目論見書だけでなく、モーニングスターなどの評価サイトでも確認できます。複数のファンドを比較検討する際に役立ちます。
投資信託の分配金政策を理解する(毎月分配型の落とし穴)
投資信託の分配金には大きく分けて「普通分配金」と「特別分配金」があります。これらの違いや、特に注意が必要な「毎月分配型」の落とし穴について解説します。
普通分配金:ファンドの運用で得た利益から支払われる分配金で、課税対象 特別分配金:投資元本の払い戻しにあたる分配金で、非課税
特に注意が必要なのが「毎月分配型」の投資信託です。毎月分配金が出るため一見魅力的に見えますが、以下のような落とし穴があります。
- 分配金の多くが「特別分配金」(元本払い戻し)である場合が多い
- 分配金として受け取った分、ファンドの基準価額が下がる
- 分配金を再投資しないと複利効果が得られない
- 分配頻度が高いため、運用効率が悪くなる可能性がある
特に長期の資産形成を目的とする場合は、「分配金再投資型」や「分配金の少ないファンド」が有利なことが多いです。分配金は単なる「お金の移動」であり、ファンドの実質的なリターンには影響しないことを理解しておきましょう。
税金の観点からも、特に特定口座(源泉徴収あり)で投資している場合は、分配金が少ないファンドの方が税効率が良いケースが多いです。
日本でおすすめの低コスト投資信託10選
コストが長期投資のリターンに大きく影響することは既に説明しました。ここでは、日本で購入できる低コストの投資信託をいくつかご紹介します。
国内株式インデックスファンド比較
日本の株式市場(主にTOPIX)に投資する低コストのインデックスファンド
信託報酬比較
これらのファンドはいずれもTOPIX(東証株価指数)に連動することを目指しています。基本的な性質は同じなので、信託報酬の低さと購入のしやすさ(最低投資金額、販売会社など)で選ぶとよいでしょう。
信託報酬の重要性:
長期投資では、信託報酬の差が大きく効いてきます。例えば、1,000万円を30年間投資した場合、信託報酬が0.1%違うだけで最終的な資産額に約30万円の差が生じます。
国内株式に投資する低コスト投資信託比較
これらのファンドはいずれもTOPIX(東証株価指数)に連動することを目指しています。基本的な性質は同じなので、信託報酬の低さと購入のしやすさ(最低投資金額、販売会社など)で選ぶとよいでしょう。
長期投資では、信託報酬の差が大きく効いてきます。例えば、1,000万円を30年間投資した場合、信託報酬が0.1%違うだけで最終的な資産額に約30万円の差が生じます。
投資信託初心者におすすめのバランス型ファンド
株式と債券に分散投資する「バランス型」の投資信託は、リスクを抑えながら安定したリターンを目指せるため、初心者にもおすすめです。
初心者向けバランスファンド比較
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)
楽天・全世界株式インデックス・バランス・ファンド
ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)
セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド
ウェルスナビ・ファンド
バランスファンドを選ぶ際のポイント
バランスファンドを選ぶ際のポイントは、資産配分(株式と債券の比率)とコストです。株式の比率が高いほどリターンが期待できる一方、リスクも高くなります。自分のリスク許容度に合わせて選ぶことが重要です。
また、最近は「ターゲットイヤーファンド」と呼ばれる、目標年に向けて徐々に資産配分を保守的にシフトさせるタイプのファンドも人気です。教育資金や老後資金など、明確な目標がある方におすすめです。
投資信託のコストパフォーマンス分析表
低コストのインデックスファンドと、人気のアクティブファンドのコストパフォーマンスを比較してみましょう。

以下は、1,000万円を20年間投資した場合のシミュレーションです(年平均リターン5%と仮定)。
低コストインデックスファンド(信託報酬0.2%)の場合
- 20年後の資産額:約2,566万円
- 支払った信託報酬総額:約40万円
- 手取りリターン:約1,526万円
一般的なアクティブファンド(信託報酬1.5%)の場合
- 20年後の資産額:約2,046万円
- 支払った信託報酬総額:約300万円
- 手取りリターン:約1,046万円
この比較からわかるように、信託報酬の差(1.3%)だけで、20年間で約520万円もの差が生じています。これは当初投資額の半分以上に相当する大きな金額です。
アクティブファンドが長期的にインデックスを1.3%以上上回り続けない限り、低コストのインデックスファンドの方が有利だということがわかります。実際には、長期的に市場を大きく上回るアクティブファンドは非常に稀です。
このような分析からも、長期投資においてはコストの低さがいかに重要かがわかります。
グローバル市場に投資できる投資信託10選
日本市場だけでなく、世界中の市場に分散投資することで、リスクを抑えながら成長機会を広げることができます。ここでは、グローバル市場に投資できるおすすめの投資信託をご紹介します。
全世界株式に投資できる投資信託厳選リスト
グローバル投資おすすめファンド比較
eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
楽天・全世界株式インデックス・ファンド
ニッセイ外国株式インデックスファンド
SBI・V・全米株式インデックス・ファンド
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
iFree S&P500インデックス
eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
たわらノーロード 新興国株式
ひふみワールド
信託報酬の重要性
上記ファンドの信託報酬の差は最大で約1.5%。この差は30年間の長期投資では元本の約33%に相当します。例えば1,000万円を30年投資した場合、約330万円もの差になります。低コストファンドを選ぶことは、長期投資では非常に重要なポイントです。
全世界の株式市場に幅広く投資できるファンドは、地域や国による偏りを避け、分散投資効果を高めることができます。特に初心者の方は、まずグローバル分散型のインデックスファンドから始めることをおすすめします。
投資信託で実現する新興国への分散投資戦略
全世界に分散投資する中でも、成長期待の高い新興国市場に注目した投資戦略も有効です。
新興国投資のメリットとしては以下が挙げられます:
- 先進国よりも高い経済成長率
- 若年人口の多さによる将来の消費拡大
- 先進国市場との相関が比較的低い(分散効果)
一方、デメリットとしては以下があります:
- 政治的リスクが高い
- 通貨の変動が大きい
- 情報の透明性が低い場合がある
新興国への投資は、全体のポートフォリオの10%〜30%程度に抑えるのが一般的です。以下におすすめのファンドをご紹介します。
- eMAXIS Slim 新興国株式インデックス
- 信託報酬:年0.1868%(税込)
- 特徴:新興国株式に特化した低コストファンド
- 投資対象:主にBRICs、台湾、韓国などの新興国株式
- たわらノーロード 新興国株式
- 信託報酬:年0.198%(税込)
- 特徴:購入手数料無料、新興国株式に投資
- 投資対象:MSCIエマージング・マーケット・インデックスに連動
新興国への投資は値動きが大きいため、積立投資が向いています。定期的に一定額を投資することで、価格が高い時には少なく、安い時には多く買うことができます(ドルコスト平均法)。
投資信託で為替リスクをコントロールする方法
海外に投資する場合、為替変動リスクは避けられません。ここでは、為替リスクをコントロールする方法をご紹介します。
為替ヘッジあり・なしの選択
海外に投資するファンドには「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」の2種類があります。
- 為替ヘッジあり:為替変動の影響を抑える代わりに、ヘッジコストがかかる
- 為替ヘッジなし:為替変動の影響をそのまま受ける(円高で損、円安で得)
為替ヘッジありのファンドとしては、以下のようなものがあります:
- eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(為替ヘッジあり)
- 信託報酬:年0.1738%(税込)
- 特徴:先進国株式に投資、為替ヘッジによる為替変動リスクの低減
- 投資対象:MSCIコクサイインデックス(除く日本)
- ニッセイ外国株式インデックスファンド(為替ヘッジあり)
- 信託報酬:年0.154%(税込)
- 特徴:先進国株式に投資、為替ヘッジあり
- 投資対象:MSCIコクサイインデックス(除く日本)
現在は日米の金利差が大きいため、米ドルをヘッジすると年1%以上のコストがかかります。そのため、長期投資では「為替ヘッジなし」のファンドが選ばれることが多いです。
複数通貨への分散投資
為替リスクをコントロールするもう一つの方法は、複数の通貨に分散投資することです。米ドル、ユーロ、英ポンド、オーストラリアドルなど、様々な通貨に分散することで、特定の通貨の変動リスクを軽減できます。
全世界株式インデックスファンドは、自然と複数通貨に分散されています。例えば:
- eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)
- 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
これらのファンドは、米ドル、ユーロ、英ポンドなど多数の通貨に自然と分散投資されるため、特定の通貨の変動リスクが軽減されます。
為替リスクについては、投資期間が長いほど平準化される傾向があります。短期的な為替変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資を続けることが重要です。
投資信託の賢い長期運用戦略
投資信託は一度購入して終わりではありません。より効果的な運用のためには、長期的な戦略が重要です。ここでは、投資信託の長期運用のコツをご紹介します。
投資信託の積立設定方法と複利効果の実例
投資信託の購入方法には「一括購入」と「積立投資」があります。初心者の方には特に「積立投資」がおすすめです。
積立投資のメリット
- 少額から始められる(月々5,000円~など)
- 値動きを平準化できる(ドルコスト平均法)
- 投資習慣が身につく
- 複利効果を最大限に活かせる
積立設定の方法
- 証券会社や銀行のウェブサイトやアプリから「積立設定」メニューを選択
- 積立対象のファンドを選択
- 積立金額(月々いくら)と積立日(毎月何日)を設定
- 引落口座を設定
- 申し込み完了
複利効果の実例 月1万円を30年間積み立てた場合の資産額シミュレーション:
- 年利3%の場合:約586万円(元本360万円+リターン約226万円)
- 年利5%の場合:約833万円(元本360万円+リターン約473万円)
- 年利7%の場合:約1,227万円(元本360万円+リターン約867万円)
このように、積立期間が長いほど、また運用利回りが高いほど、複利効果は大きくなります。一方、信託報酬などのコストは複利効果を阻害するため、できるだけ低コストのファンドを選ぶことが重要です。
積立投資は「時間の力」を味方につける投資法です。早く始めるほど複利効果は大きくなります。例えば、20歳から積立を始めるのと30歳から始めるのでは、最終的な資産額に大きな差が生じます。
複利効果のポイント
- 時間が味方になる: 投資期間が長いほど複利効果は大きくなります。例えば30年間の積立では、元本の合計が360万円でも最終的な資産は1,000万円を超えることもあります。
- わずかな金利差が大きな差に: 年利3%と7%では、30年後に約640万円もの差が生まれます。長期投資では、わずか1%の信託報酬の違いが将来の資産額を大きく左右します。
- 加速する複利効果: 投資の前半10年よりも、後半10年の方が資産の増え方が大きくなります。これは「複利の複利」が効いてくるためです。
- 早く始めることの価値: 20歳から月1万円を年利5%で積み立てると、60歳で約2,300万円になります。一方、30歳から始めると約1,300万円。この1,000万円の差は「時間」の価値です。
複利効果を最大化するために
1. 低コスト商品を選ぶ
信託報酬が年0.5%違うだけで、30年後の資産額は約15%も変わります。インデックスファンドなど低コスト商品を選びましょう。
2. 長期継続する
相場の上下に一喜一憂せず、長期間継続することが重要です。時間が複利効果を生み出します。
3. 早く始める
「今から始めるのが遅すぎる」ということはありません。しかし「早く始めるほど有利」なのは確かです。
4. 定期的に増額する
可能であれば、収入が増えたときに積立額を増やしましょう。複利効果はさらに高まります。
投資信託のリバランス戦略と実践ポイント
長期投資では、定期的な「リバランス」も重要な戦略の一つです。
リバランスとは? 当初設定した資産配分(例:株式60%、債券40%)に、定期的に戻すことです。市場の変動で配分比率が変わった場合(例:株式が上昇して70%になった場合)、一部を売却して当初の配分に戻します。
リバランスのメリット
- 「高く売って安く買う」という投資の基本ができる
- リスクを一定に保てる
- 感情に左右されない投資ができる
リバランスの実践ポイント
- 頻度:年1回~2回程度が一般的
- タイミング:定期的(例:毎年1月)または乖離率基準(例:配分が5%以上ずれたら)
- 税金:特定口座内でリバランスすると税金計算が簡単
- 手数料:売買手数料がかかる場合は頻度を抑える
投資信託では、複数のファンドを組み合わせている場合にリバランスが必要です。例えば、「全世界株式ファンド」と「国内債券ファンド」を6:4で保有している場合、株式市場が上昇して比率が7:3になったら、株式ファンドの一部を売却して債券ファンドを購入し、6:4に戻します。
なお、バランス型ファンド(1本のファンドの中で株式と債券の配分が決まっているタイプ)を選べば、ファンド内で自動的にリバランスされるため、自分で行う必要がありません。初心者の方には、この方が手間がかからず便利です。
投資信託の活用とNISA・iDeCoの組み合わせ方
投資信託を活用する際には、税制優遇制度である「NISA」や「iDeCo」を利用することで、さらに効率良く資産形成ができます。
NISA(少額投資非課税制度)
- 2024年から「新NISA」がスタート
- 年間360万円まで非課税で投資可能(成長投資枠240万円+つみたて投資枠120万円)
- 運用益(値上がり益・分配金)が非課税
- 非課税期間は無期限
- 18歳以上なら誰でも利用可能
iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 掛金が所得控除される(所得税・住民税が軽減)
- 運用益が非課税
- 受取時も一定の控除あり
- 60歳まで引き出し不可
- 職業によって拠出限度額が異なる(月々1.2万円~6.8万円)
NISAとiDeCoの効果的な組み合わせ方
- まずはiDeCoの限度額まで活用(所得控除のメリットが大きいため)
- 次にNISAのつみたて投資枠を活用(長期積立向き)
- さらに余裕があれば、NISAの成長投資枠も活用
- それでも余裕があれば、一般口座での投資も検討
NISA・iDeCoで購入すべき投資信託
- つみたてNISA:低コストのインデックスファンド(信託報酬年0.5%以下)が基本
- iDeCo:年代に応じたバランスファンドや低コストインデックスファンド
- 一般NISA(成長投資枠):特定のテーマや個別株も検討可
投資信託の積立とNISA・iDeCoを組み合わせることで、「複利効果」と「節税効果」の二重のメリットが得られます。特に若いうちからこれらの制度を活用することで、老後までに大きな資産形成が期待できます。
まとめ
投資信託選びは、数千本ある商品の中から自分に合ったものを見つける旅のようなものです。
本記事では、投資信託の基本構造から選び方の比較基準、おすすめ商品、長期運用のコツまで解説してきました。ここでポイントをまとめておきましょう。
投資信託選びの5つの基本原則
コストを最優先に
長期投資では特に信託報酬の差が大きく影響します。同じインデックスなら最も低コストの商品を選びましょう。
分散投資を心がける
全世界株式や複数資産に分散することでリスクを抑制。一つの国や地域に集中しないようにしましょう。
シンプルなものを選ぶ
複雑な商品は避け、自分が理解できる商品を選びましょう。仕組みがわからないものには投資しないことが基本です。
長期的視点で考える
短期的な値動きに一喜一憂せず、長期目線で投資しましょう。市場は短期的には上下しますが、長期的には成長する傾向にあります。
税制優遇制度を活用する
NISA・iDeCoを使って税金の負担を軽減しましょう。特に長期投資では、複利効果と合わせて大きな差になります。
投資信託選びに「絶対的な正解」はありません。自分の年齢、投資目的、リスク許容度に合った商品を選ぶことが大切です。
投資を始める前にやっておくべき3つのこと
-
生活防衛資金の確保
まずは3〜6ヶ月分の生活費を預金等で確保しましょう。急な出費や収入減に備えることが投資の前提条件です。
-
投資目的の明確化
なぜ投資するのか、目標金額はいくらかを明確にしましょう。老後資金、教育資金など具体的な目標があると続けやすくなります。
-
投資知識の習得
基本的な投資知識を身につけてから始めましょう。この記事を読んでいるあなたは、既に一歩を踏み出しています。
投資は長い旅です。一度始めたら、定期的に資産配分や商品を見直しながら、長期的に続けていくことが成功の秘訣です。
投資信託は、少額から始められ、分散投資ができる優れた金融商品です。この記事が、あなたの資産形成の第一歩となれば幸いです。
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